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  レ ー ス  回 顧




 メジロ 
メジロラモーヌ(12戦9勝、新馬は20馬身差の大楽勝。
桜花賞、オークス、エ杯の三冠牝馬)が、クイーンCに上京。
歴史に残る凄い踏み込みで、地面が揺れて京王線が一時停まった
 (ジョーク)






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レース・重賞回顧はいろいろなところで、ずいぶんたくさん書いてきました。「週刊競馬通信」では帰りの電車の中で手書きしたり、モバイルを膝の上に置いて打ったり、そのうち最後の頃は、締め切りが早まり、家でTVで見たあと、PCであっという間に打って4時10分にはメールで入稿してました。

競馬専門紙に在籍していたころは、大川慶次郎さんに、ゴールインの瞬間に全馬の勝因・敗因が理解でき、すぐ回顧が書けないとダメだと言われていた。だから、いつ書いてもおもしろい作業だし難問が多いしスリリングでもある。「週刊競馬通信」の回顧は、感情・意欲まで瞬時に頂点に持っていかないと20分で書けないから、集中力が必要で、終わるとしばらく放心状態になることも多かった。

目次のタイトルをクリックすれば、当該原稿にジャンプします。でも、全部読んでいただければ嬉しいです。

ネットや Twitter (@YujiroRyu)で、毎週の回顧、独白も少しずつやっています。
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 桜
 桜と夕陽。(春の井の頭公園)




 リセット
井の頭は年に180回は通った。4年で700回。






「週刊競馬通信」

・1995 函館記念   夏の終わり (そしてトロットサンダーの未来)

・1996 中山牝馬S プレイリークイーン 大草原に咲くガーベラ

・1996 安田記念   夢の饗宴、[父][地]のトロットサンダーが制す

・1996 新潟記念 トウカイタロー  さあ、来週も、私は競馬だ

・1996 府中牝馬S サクラキャンドル 充実の秋

・1996 エ杯 ダンスパートナー  名血・名配合馬、女王となる

・1996 カブトヤマ記念 スガノオージ  秋深し父内国産の王となる

・1997 ドバイのホクトベガ  雨、雨、雨、雨、雨、雨、雨、雨


「書斎の競馬」

・1999/Mar 【創刊号】       ふつうの趣味


・2000/Jan  スワップス Swaps. 日本の競馬とウダイプール Udaiur.


「ホースレター」
・04/06/03 ダービー       コスモバルクの暴走





 府中 
1980年頃の、競馬開催日の午前中、東京競馬場スタンド内の通路。
一頃、いつもいた20番柱付近。





 「友ちゃん食堂」で 腹ごしらえして
若い頃は東京競馬のレースが終わると歩いて府中の町へ。旧モナムールで競馬談義→これがいつも歩いた友ちゃん食堂のあった裏通り→そして雀荘とか。







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1995 函館記念
夏の終わり (そしてトロットサンダーの未来)

(※ 地方競馬から来た7着のトロットサンダーは、この後、この回顧で私の書いたとおり、毎日王冠からマイルCSに進み、重賞未勝利でG1を快勝することになる。マイルCSでの◎トロットサンダーが私のデイリーのコラム・デビュー戦にもなった。その後、彼はマイルを何度走っても全部勝った。私の人生と縁の深いテスコボーイの血が入り、忘れられない馬だ。
 そして、現在では、函館は札幌の前に開催され、夏の終わりではなくなったから、最終段落の詩情は懐かしい話になってしまった。[2005/Jan])




  インターマイウェイは、3歳時に函館の重馬場で新馬、クローバー賞を連勝デビューした馬で、洋芝の渋った2000mはベスト。追切りの動きからも完調。大阪杯のように、逃げ馬がいないようなレースでピタッと折り合いをつけて鋭く差せる特徴があり、折り合いに関して優れたものを持つ藤田の腕とも相性は良いだろう。今日は、まさに快勝と言えるもので、秋のGも楽しみになってきた。

 Lyphard 3×3、パーソロン4×3という、きついクロスを2つ持っていて、レースに注文がつきそうだ。 ニッポーテイオーは千代田牧場の傑作で、ヒンドスタン、ダイハード、パーソロン、ラバージョン、リィフォーと並ぶ牝系は、2000のA級血脈を代々重ねるという千代田一流の基本姿勢が見てとれ、そういう見識は、日本でも屈指のものだった。

 ラバージョンの粘っこさも貴重で、その父 Damascusは、ブライアンの母やヘクタープロテクターにも入るが、Blue Larkspur クロスを主に、By Jimminy×Blade of Time の3/4同血クロス3×2を持っているのが遺伝力のキイだ。

  Damascus のような傍系の優れた血脈を、意図して 、 しかも適度に使える生産者は日本には、ほとんどいない。

 マチカネタンホイザは、連対10回のうち、8回が左回り、右回りのうち1回が中山の外回りと、回りを気にする馬で、そのマイナスが、またも現実のものとなった。

 トロットサンダーは札幌記念でも書いたように、1600がベストの馬で、産駒が2000で勝てないダイナコスモスにテスコボーイ牝馬の配合だから、オータム・ハンデから毎日王冠→マイルCSのローテーションをとってほしかった。マイルなら相当な器だと思っている。

 カチボシは、中距離のほうが良いと思うが、Buckarooが入るし、2000や1800も良いかもしれない。距離的には今のところ、私には何とも言えないが、幸いにして今考える必要もない。とりあえず、中京や函館で追込むのは苦しいと見ている。

  8月の函館は、ここ3週間、ほとんど陽が射さず 、例年より寒い夏だった。競馬ファンにとって、夏の終わりは函館記念。3コーナーの向こうに津軽海峡の海が沈んだように見えると夏は終わり、心に秋の気配が忍び込んでくる。夜が長くなり始め、去っていく街の灯が、遠くに、うっすらと手を挙げて泣いていて、ふと心の中の秋へ帰る旅人となるのだった。
   (笠雄二郎・Yujiro Ryu・競馬評論家)
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1996 中山牝馬S・プレイリークイーン
大草原に咲くガーベラ



中山牝馬Sは重賞になる前から小回りの1800特有の前残りがセオリーで、ハーバーゲイムやキョウエイグリーンのようなマイラーが逃げ切ることが多く、谷岡牧場の礎となり今をときめくサクラセダンも好位からきれいに抜け出したものだ。オークスで勝ち負けしたメンバーも数多く挑戦したが勝てず、ここ数年はあまり出てこない。内回りの中山ゆえにスピードの検定レースのイメージもあった。ところが、近年はスプリンター路線が整備されて1200〜1600ベストの馬も無理には出てこなくなり、マイルから中距離の間の先行馬と追い込み馬の対決のパターンが多い。

1970年の秋の東京2000で牝馬東タイ杯(今の府中牝馬S)とは別に、突然、オープンの「牝馬ステークス」が行われたのは、今でも強く印象に残っていて、桜花賞路線で活躍した組とオークス路線で活躍した組が年齢を問わず激突し、勝ったのはどちらの組でもない2000タイプのキヨズイセンで、オークス2着のスズガーベラや桜花賞のタマミやハーバーゲイムを抑えた。京都牝特と阪神牝特を連覇するのは西の偉業だと思っていたが、東ではさしずめ中山牝馬Sと府中の牝馬Sを連覇するのがボーナスを出してもよいくらいの困難さかもしれない。

今年から牝馬のチャンピオンレースが創設されるのは喜ばしいが、マイラーに縁遠い存在にならないか心配で、多くのタイプからなるオールカマーの牝馬レースなら、歴史を吟味して考えれば府中の1800がスリリングでベストだったか。

プレイリークイーンは、サウンドトラックにコインドシルバー、バンブーアトラスという並びで、私の配合論からは好きになれないが、ファンドリリヴリアを突き放せば立派なオープン馬といえ、今日の勝ちもみごとなものだった。

先のスズガーベラは辻牧場の傑作で、府中で強く、中山の内回りでは追い込みが利かずいつも苦杯を嘗め、私に競馬の基本を教えてくれ、Umidwar=Udaipur3×4の全兄弟クロスをしていて、それは私に血統論を教えてくれた。大草原の女王プレイリークイーンは曾祖母がスズガーベラだが、まったく逆に好位からその名のとおりパワフルに抜け出す戦法が得意で、内回りのコースで追込馬を尻目に快勝し、曾祖母とあわせて府中と中山の両方の牝馬レースに名を刻んだことになり感慨深い。
   (笠 雄二郎・Yujiro Ryu・競馬評論家)
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1996 安田記念
夢の饗宴、[父][地]が制す



 今年の安田記念は、[外]が7頭、フランス馬が1頭、ドバイの馬が1頭、サンデーサイレンス産駒2頭を含め社台ファーム関係が4頭。G1・1着馬が8頭という豪華メンバーだった。トロットサンダーは地方競馬出身の父内国産馬だが、マイルG1の王者として、これだけ揃えば相手に不足はない。

 東京新聞杯の回顧で書いたし、デイリーのコラムやマルチメディア予想でもいつも書いているように、私はこの馬が好きだ。アウトブリードで母の父テスコボーイの良さが出た馬で、祖母の父リンボーの力強さも表現されている。父のダイナコスモスも皐月賞で◎を打った好きな馬だが、トロットサンダーの場合は、そんなことよりも母系が出ていることに感動する。

 テスコボーイは、Nasurullah と Hyperion の組み合わせというシンプルな組成を持っていて、遺伝力に優れている。私は、Nearco と Hyperion の組み合わせは、ある特定のケース以外は認めないで今まで来た。マイナスの影響が出て、硬さが表現されるので好まない。テスコボーイは後駆のバネが柔らかく歩くと弾むようなタイプがいい。最初に感動したのは、ランドプリンスをパドックで見たとき。その後、いいケツをしたテスコボーイには、テスコガビーやトウショウボーイがいたが、20年前にこの雑誌に書いたように、ミスターシービーは私のイメージではない。種牡馬として何度もリーディングサイアーとなり一時代を築いたし、また母の父としても2頭のダービー馬を出して成功したが、アイネスフウジンはテスコボーイの良さが出ていた。

 マイルなら、いつでも34秒台前半の上がりの脚が使える馬で、今日のパドックでもバネのよく利いた堂々たる歩き方を見せていた。レースは、角田がきっぷのいい逃げを見せて引っ張ったため、直線で横一線にならなかったのもよかった。横一線になると、どうしても追い込み馬は大外に回さなければならず、昨年のサクラチトセオー、京王杯のトロットサンダーなどは、アヤで負けてしまう。今年の安田記念は直線でも縦長になって、いかんなく力を発揮することができた。

 そういうレースならハートレイクには負けられない。タイキブリザードは昨年よりも、ほんの少しだが力を付けている。ただ、マイルはとくに、切れる脚がないと勝ち切れない。ダンスパートナーはマイルはベストではないが、ふっくらした良い馬体で、久しぶりのフランス馬との対戦のせいか表情にも覇気を感じさせていたが、6着なら実力を示した。シャンクシーは細かった。しかし日本の誇るテスコボーイの血の威力を、あのバネの利いた後駆を信頼する私にとっては、Nearco と Hyperion が過剰にごちゃついて硬さを表現するこのタイプの馬は感動するところがない。

 行かせれば行けるタイプで、2000の天皇賞は引っかかるかもしれないが、秋のマイルCSも連覇してほしいものだ。
     (笠 雄二郎・Yujiro Ryu・競馬評論家)
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1996 新潟記念 トウカイタロー
私は…、さあ、来週も、私は競馬だ



 誰もが逃げると思ったミラクルドラゴンズだが、投手陣が若すぎて優勝争いの大事な試合になるとビビってしまった星野軍団のように、乗り役の出っぱがイマイチ。ミラクルどころか練達の田原に巧く締められて逃げることさえできなかった。まあ、広島を倒すのは来年でもいいよ。

 後はゆったりと向こう正面に流れていって、もうこのメンバーでは捕まえられない。夏のローカルの4つの記念レースを全部2000mでやるとなると、いまの短距離偏重の競馬の体系では中距離馬が足りなくなるだろう。今日はオーン特別という雰囲気で内容も薄かった。

 トウカイタローは母の姉がトウカイミドリで、その子がオークスで、人気の田原が乗ったダイアナソロンを破ったトウカイローマンだ。トウカイミドリの孫にトウカイテイオーがいる。トウカイタローの母と、トウカイテイオーの母は4分の3同血でもある。

 トウカイローマンは父が Never Bend の子のブレイヴェストローマンなので、Djebel5×6だ。トウカイテイオーは父がパーソロン系のシンボリルドルフなので、Milesian 3×5。トウカイタローは父のコインドシルバーに Never Bend が入るので、やはり Djebel6×6になる。

この牝系にはトウカイクインのところにアトランティスが入る。アトランティスは遡ると、Milesian, My Babu, Djebel となり、この血をクロスさせることが重要だ。My Babu は、Lady Josephine と Lavendula が入る面白い血で、Nasrullah 系の Never Bend は母の父 Djeddah の、Durban = Heldifann 3×2が特徴だ。パーソロンの3代母は Durban = Heldifann 2×1だった。そのあたりのことは、筆者の「サラブレッド配合史」に書かれている。

 この牝系は遡ると、5代母が、ダービーを初めて勝った牝馬として知られるヒサトモで、配合はトウルヌソル×星友、騎手は故中島啓之の父中島時一だった。その時の2着も名門下総御料牧場の牝馬サンダーランドで、トウルヌソル×星若だった。

 赤門を出て意に反して日雇い労働をしながら、毎日私と競馬場に通っていた友達Oは17年前に医療過誤もあって夭折したが、彼と中島啓之のことは、いまでも、競馬場の門をくぐるたびに思い出す。

 さあ、来週も、私は競馬だ。

     (笠 雄二郎・Yujiro Ryu・競馬評論家)
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1996 府中牝馬S
サクラキャンドル 充実の秋



 天気がぐずつき始めると、関東地方の天気予報は全くといっていいほど当たらない。天気は西から東へ遷りゆくものというのが当然の基本だから、つい西のほうにばかり目がいく。しかし関東の場合は東海上の気圧配置が大きな要因になるような気がする。東が高いとハングアップしたPCの画面のように貼り付いて動かない。そういう場合は常識よりも移動をずらせて考えたほうがいいかもしれない。

 教科書に出ていなければ自分で研究すればいいのだが、二十歳そこそこで基礎知識だけ試験で受かったギャルの気象予報士には、そんな疑問が浮かぶとは思えない。科学とはいつから金太郎飴になってしまったのか。

府中はオーバーシードになってから晴だとパンパン、雨だと粘りついて極端に変わるような気がするのは気のせいか。今日は朝起きたら快晴。うーむ、なんということだ。

 牝馬の最強馬決定戦は府中の1800mがいいと言ってきた。この条件なら、脚質も、スピードやスタミナのバランスも、まずまず公平に収まる。トライアル戦という設定になったが、良いメンバーが集まった。早いうちにG2にしてほしい。

 レースは緩みなく流れ、好スタートのあと絶好の位置に控えたサクラキャンドルが快勝した。追い込み馬たちは少し位置どりが後ろすぎたか。さすが藤田だけは、4角でインの後方にいて、横山典や土肥がやるように馬群の縁をかすめて外に出して追い込んできた。府中の4コーナーはきれいな楕円ではないから、4角で追いながら外に開くと、相手が格下でないかぎり、まず伸びない。

 サクラキャンドルの牝系は遡ると Frizette に至る。この名牝はトウルビヨンの3代母として有名で、母の父はセントサイモンだが、父の Hamburg は、その祖母が名馬ドミノの母でもあるので当然レキシントンの塊となっている。

 19世紀の欧米の両雄レキシントンとセントサイモンが配合されるとどういうことになるか、それを考えただけでも胸がときめく。クレアーブリッジの母 Abeyance Lass は、Frizette 5×5でもある。

 4角形という名の Quadrangle も、ラトロワンヌの名血が入る面白い血で、私が「サラブレッド配合史」の初版を出した自分の会社「らんぐる社」は、漱石の「智に働けば角が立つ」と、フランス語のクッキー「猫の舌」(ラングドシャ)をしゃれたものだ。

 福永祐一を書くチャンスは、伊与田翔氏に譲ることになった。
     (笠 雄二郎・Yujiro Ryu・競馬評論家)
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1996 エリザベス女王杯
名血・名配合馬、女王となる


 デイリースポーツの日曜夕刊と月曜朝刊に血統展望を書き始めて、ちょうど1年経った。G1以外は日曜の午後の1週前登録にならないと、出る馬が想定でしかなく情報には限りがあるし、近頃のG1は出る出ないが馬によってはレース直前までハッキリしないし、熱発明けや休み明け、はてはせっかく◎に書いたのに骨折したりと神経を遣う。それでも52週で筆頭に推したのが27回連対したから、始めた時に自分で思っていたより2倍の成果だったのは幸運としか言いようがない。けっきょく、私の予想論は血統だけではないのだが、展開も馬場状態も全メンバーも調教も分からない時点での書き方は、個々の馬の持っている地力を書くしかないのだろう。

 今週などは、マイルCSが、タイキフォーチュンもファビラスラフインも出るだ出ないだと四転五転し、シンコウキングが富士Sを勝ったら連闘で、マサラッキとベストタイアップは賞金順が補欠候補で、エイシンワシントンが出ないと逃げ馬不在という状態でお手上げ同然だ。木曜日に、両手に編集の仕事のゲラやプリンターを持って、当週の特別予想をする時間がないから夕刊デイリーと予想ノートを読みながら地下鉄の階段を降りていたら、最後の1段で滑って、点字ブロックの上に両膝から大の字に落ちてしまった。脚を傷めてしまったが電車の吊革で懸垂しながら帰り着いて冷湿布して朝までかかって予想をした。おかげで、今週は7Rで6R的中。ここ4週で33Rのうち21R当てたが、競馬場に行けなくなるから膝は当てたくはなかった。

 エリザベス女王杯はG1連対馬が上位だというのを予想のポイントにしたが、世間では少数意見だったのが面白い。ダンスパートナー、エアグルーヴ、ヒシアマゾン、ヒシナタリー、イブキパーシヴ、予想やここでA級と書いてきた牝馬は5頭しかいない。ダンスパートナーは京都の2200mがベストで京阪杯の好位差しを再現できれば勝てると思った。休み明けを一叩きしてローテーションも良かった。

 母のダンシングキイが、Blue Larkspur と Menow と Native Dancer をクロスさせる私の「父母相似配合」で、ダンパ自身は、Bluehaze = Blue Swords 5×5の私の言う「全兄弟クロス」だ。混戦G1となると私もカッコよくひねりたくなるのだが、グッと辛抱して、こういう美しい配合のムダの無い馬体の名牝を◎に推す。それが私の仕事だ。信念を貫き、そのチャンスが実ったとき、この仕事をやってきて幸せだと思う。

 休みなく海を渡りフランスでの着差も予想どおりだったがオークス以来、恋文を書く機会がなかった。
 今日あらためて、お疲れさまと言ってあげたい。
(R)
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96カブトヤマ記念
スガノオージ
秋深し父内国産の王となる



 NHK以外で見ているTV番組というと、UHFの競馬番組を別格とすれば、日曜の深夜にやっているTBSのピーター・バラカンがやっている米CBS制作のドキュメンタリーくらいだ。

 衆議院選挙は久しぶりだが、投票率は低いだろう。マス・メディアは、国民は政治不信だ、政治家には政策がない、ヴィジョンがないとか言う暇があったら、日本の財政が破綻しつつあることを、図にして時間をかけて説明してあげればいいのである。そうすれば、政治に対する関心は沸騰するだろう。

 日曜は競馬で忙しいから、不在者投票をすませておいたが、選ぶべき候補者がいようがいまいが選挙というものは行くことに決めている。古今東西、そんなにすばらしい選挙などあるわけがない。行かない人が政治がどうだ社会がどうだと偉そうな能書きを話しまくるのは、聞いていて頭が痛くなる。

 父内国産馬によるカブトヤマ記念はハンデ戦だが、昨秋の毎日王冠以来、良馬場やG1や、直線の長さや坂といった条件でないほうがよいスガノオージは、ここまで勝てないできたが、今回、56kgのハンデは恵まれた。昨年、新潟で行われた福島記念は直線の長い外回りの2000で、いったん先頭も僅差の3着に惜敗したが、今日は、前走の休み明けの太めを一叩きして、追切りも好時計、平坦コースで、直線の短い内回りの1800に替わり、相手やハンデに恵まれ、3枠の好枠を引き、騎手はローカル戦でマクれる安田富、おまけに土曜に雨が 100mm以上降って、やや重馬場。これで負けたら引退するしかなく、一年間この条件を待っていた私には、会心の◎だった。

 父のサクラトウコウは、マルゼンスキーにスワンズウッドグローヴの名血が入り、ダービー馬のサクラチヨノオーの全兄だ。スガノオージはマルゼンスキーからマクるパワーを、ナスルーラからスピードを受け継いでいるが、グレイソヴリンをクロスさせると、ズブくなる。ここが弱点だろう。

 しかし、今日のようなレースには向いている配合と言え、リマンドや3代母のモスカテラのところの底力のある血脈もかなりのものだ。

 母のベラの話は昨年書いたが、イザベラ女王の子ということで、王子にしたのだろう。
     (笠 雄二郎・Yujiro Ryu・競馬評論家)
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ドバイのホクトベガ

97ダービー卿CT
雨、雨、雨、雨、雨、雨、雨、雨


 ドバイに行ったホクトベガは馬体重が減って諦めていたが、その前から5着くらいと思っていたから、短波の実況を聴きながらも、これは10連勝のご褒美の旅行だ、無事に走って少しでも見せ場があればと思っていたが、4コーナーで落馬したまま放送は終了し、無事なのかどうか消息をつかもうとインターネットをさまよい歩き、何とも言えない寂寞感を抱いたまま回線を切断した。

 私は馬を好きにならない。けっして好きにならないようにしている。好きになると予想が狂うからだ。だから、引退すると急に好きになる。彼女はダート路線に行く前からダートならA級だと書いてきた思い出のある馬だし、中央で走らなくなったから、こちらの気が緩み、そろそろ情に絆されるようになってきていた。こういう馬が大きなレースに出走するときは観音詣りをするのだが、今回はあまり引かないおみくじを引いたら凶、もう一度引いたら凶、レースが雨で延びてもう一度行って引いたら、また凶、私の生活がさんざんだというのならいつも通りだと諦めていたが、まさか。何を書いているのか分からなくなってきた。いま、明日の桜花賞と来週の皐月賞の原稿で頭が一杯だ。本当に悲しくなるのは春競馬も終わって人心地ついてからだろう。おまけに杉村春子の死と時間がだぶるなんて、嗚呼、生きていてほしいキャリアウーマンが二人も逝きやがった。

 雨で重馬場になったダービー卿CTは、中山の仮柵を外した芝のきれいなインをどの馬が突くかが焦点だったが、今日は南井が前のレースに続いてインから差した。中山のイン差しといえば佐藤征が名人芸だったが、こういうのは執念がないとダメだ。皐月賞では朝日杯にもましてインの取り合いが予想され、審議のランプが点くかもしれない。

 父のロイヤルアカデミーは中長距離馬も出すが、スパイソングが入っているだけに柔軟で、本馬のように母系にスピードがあるとマイラーになる。兄のラヴィッスマンなどはサドラーズウェルズ産駒なのにマイラーだった。

 本馬の母ゴジラはヒシアケボノの3代母だ。その母ジェントリーは、
Nasrullah ≒ Perfume 2×3
で、母系に入る Fair Trial も似た組成を持っている。パーフュームの子にサヤニがいたが、桜花賞で名牝と謳われたチトセホープをちぎって捨てたヒンドスタン産駒のスギヒメが、母の父サヤニだった。
(R)
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1999年3月 「書斎の競馬」創刊号
笠のウイークエンド・ウオッチ「欅の向こう」



    ふつうの趣味


 空前絶後(であると祈る)、舌なめずりの品のないCMで新年の競馬も幕を開けた。そこまでして売り上げの右肩上がりを狙うなら、その分、別の面で犠牲を伴うことになるだろう。

 80年代もTVの競馬中継がクイズ番組のような趣向になったときに、私の周囲でも何人か、古かろうが真面目だろうが詳しかろうが熱烈であろうが、競馬ファンとしての熱が冷め半身の姿勢になっていったのを見てきた。

 そもそも競馬も他の娯楽と同じようにレベルの高いファンに追いつこうとして入ってくればいいのであって、レベルを下げたり趣向を変えたりしてファン獲得を図ろうというのは次善の策として併用は許されるわけだが、前面に出してやりすぎると古いファンは不愉快になってしまう。

 たとえば碁打ちが椅子で対局しようとしても時代の変遷として許されるだろうが、ゲームの本質に近い部分は新しいファンの側に、トラディッショナルなものに従う姿勢がある程度見られないと、何か空しくなってファンが入れ替わるだけになってしまうだろう。

 それと時代的な視点から考えれば、異例なほど知的文化的な高齢化社会を迎えはじめるのだから、高齢化イコール寝たきり、といった暗い発想を止めて、いかに明るく高齢化を楽しむかも求められている。もうモノを売るのにティーンに媚びるようなことはやめないと、ついには活字の世界の二の舞になるかもしれない。

 右肩上がりの経済が終わったのだから、ふつうの趣味の一つである競馬においても、売り上げや賞金が減っても残念ではあっても不思議なことは何もないし、かえって増えるほうが不気味で不思議なことではある。

         ダートの貴公子


 冬競馬の特徴はダート競馬が多いことだが、G1のフェブラリーSに向けて、2つのトライアル重賞が行われる。

 ガーネットSはテンの3Fが33秒を切るという芝よりも速いペースで流れ、ワシントンカラーが圧勝した。

 トキオパーフェクトは休み明けをハイラップで逃げて4着なら勝ったと同じくらいの評価ができる。その後、千二のオープンを圧勝したが能力からいって当然だろう。

 関西の平安Sは遅めの平均ペースで流れ、オースミジェットとエムアイブランが連対した。

 ガーネットSはハイペースで、平安Sは遅めのペースというのは、トライアルが2つになって定着していく傾向となろう。

 今年もフェブラリーSは速いペースにならずに馬によっては折り合いに問題が出るような流れだったから、ブリンカーをして内でもまれたりすると走る気が消失するようなワシントンカラーにはつらいかもしれない。

 それに9番枠のメイセイオペラの通過点ごとの完璧な前後・左右の位置取りは鞍上・菅原勲の技術の高さだが、それとは違って、11番枠から出て少しずつ内に入っていき、最後はインに突っ込もうとしたワシントンカラーは、それぞれの時点・通過点ごとに私のイメージとは違う位置に少しずつ、はまり込んでいった。

 タイキシャーロックは10月の南部杯から12月初旬の浦和記念を使い、間隔が開いての参戦となった。これは昨年5着時のローテーションと同じだったが、私は年末のクリスマスの頃に行われる東京大賞典を使うほうが、距離的な問題を別にすればベターだと思う。

 それと、タイキシャーロックとオースミジェットは父がジェイドロバリーだから、賞金稼ぎは上手いが、どうもハンディキャップ・タイプなのは否めず、G1では◎が打てない。

 昨年からフェブラリーSの日程が2週間繰り上がり、府中開催の初週となった。このことから、東京の冬は雨や雪が多いのは2月や3月の後ろのほうだから、府中開催初週となると確率的には、力のいる良馬場ダートという感じでフェブラリーSの週を迎えることになる。開催初週は馬場の状態が分からないまま競馬が始まると、前予想をする立場に立つと非常に困る。

 私などは前週に新聞のコラムを書いているから、インターネットのホームページでピンポイントの週間天気予報ばかり見ているが、ダートの砂の厚さなどは単に何センチというわけでもないし、毎週、インか、あるいは外かと、末脚の伸び具合が微妙に変わるが、やはり一度この目で見て安心したいし、一度見てから、あとは一週ごとのイメージの補正ですむという程度の予想状態に持ち込みたい。だからG1なら、せめて、秋の芝開催もそうだが、開催2週目としてほしい。

 昨冬は1月に雪が多かったものの、府中開催初週は晴れて乾いたダートで行われ、やや細身のエムアイブランには苦しかった。府中のマイルのダートは特に、砂が乾いて時計がかかるとパワーが必要で馬体重がほしい。雨が降って脚抜きがよいと軽量馬が差してこれる。今年は土曜は時計がかかっていたが、日曜はなぜか時計が速くてエムアイブランには有利だった。

 中央のダート番組の常連に◎の適役がいないとなると、その後日に東京大賞典、フェブラリーSと続き、日本のダート三冠レースと呼べる可能性のある南部杯を逃げて圧勝したメイセイオペラと、芝から転戦した桜花賞馬キョウエイマーチの2頭となる。キョウエイマーチはハナに行きたがるだけに府中のマイルでは苦しいだろう。メイセイオペラは、好位で折り合って抜け出せるのか、先行してキョウエイマーチの後ろの2番手で折り合えるのか、府中だけに問題はそれだけだったが、ジョッキーも巧いだけに、全く問題なかった。

 母の父タクラマカンはマイルで活躍した外車だが、栗毛の馬体のイメージもそうだが、タクラマカンのマイル適性を譲り受けている。貴公子と言われたテンポイントも美しかったが、メイセイオペラも貴公子然とした美しい馬だ。

 ダマスカスは、サイアーラインとしては成功しなかったが、ナリタブライアンの母パシフィカスもダマスカスを持つが、こういう血は母系で生きる。サイアーラインで成功するもの、母系で成功するもの、両方で成功するものという3つの成功の態様がある。異系のダマスカスが母系に入ることにより、ノーザンダンサーのような主流血脈が使いやすくなるという按配も重要だ。

 フェブラリーSをサイアーラインから分析すれば、ニジンスキー系はホクトベガと同じで大活躍しているし、リボー系の血を母系に持つ馬も多いし、このレースは千八くらいこなせる力馬血統が強いということが言える。今年のメイセイオペラも父がニジンスキー系だった。

        配合はA級


 年のはじめというと金杯だが、中山金杯で力をつけたサイレントハンターが快勝した。馬体が充実してきたのが分かるし、追い切りも目立つようになって、展開的にも融通が利くようになった。

 秋の天皇賞は、サイレンススズカの骨折を避けるような素振りをして大きな不利があったと騎手が語っていた。筆者は、骨折がなければサイレンススズカがラップの計算からも勝っていることは明白だと思っているが、事故がなければ、サイレントハンターが2着の流れ込みというシーンも考えられたのではないかと少し思っている。それほどメンバーのレベルが低かった。

 サイレントハンターの持つクロスは、ブルーヘイズとブルースォーズの〈全兄弟クロス〉で、これはサンデーサイレンス産駒としてはダンスパートナー、ダンスインザダーク姉弟と同じだ。G1となると小回りの二千がベストだから、ちょうどいいレースがない。

       青春の鬱屈と開花


 エモシオンは才覚を感じさせる馬だが、皐月賞とダービーの敗因が分からなかった。あとで秋になって、あのときは滑ったとか、輸送で疲れたとかいう噂を耳にした。クビの格好以外は問題ないと思う。気性的にレースで行きたがるので能力が不完全燃焼に終わる傾向がなかなか消えない。メジロドーベルと同じような危惧を抱くが、有り余る能力を持て余して青春を鬱屈して負けていく姿は応援のしがいがある。日経新春杯と京都記念で開花と見ていいだろう。宝塚記念でどうなるか期待は大きい。

 AJC杯のスペシャルウィークと日経新春杯のメジロブライトは、ともに日本の血統が深く入るからオクテのステイヤーと見てきた馬で、このあたりは順当に通過して春の天皇賞で爆発するだろう。

        絶妙の逃げ


 四歳馬では、共同通信杯のヤマニンアクロがおもしろかった。四歳戦線はスローになると収拾がつかなくて、ここ数年、サニーブライアンやセイウンスカイのように、逃げ馬が、それも特に芝の荒れた中山は活躍する。

 ヤマニンアクロは岡部で三歳Sを逃げたときは、ピリッとした脚がないのに後続を待ちすぎて、アドマイヤコジーンなどに交わされてからは脚色が同じという、もったいないレースだった。逃げて引き付けて差し返すにはスローでなく平均ペースで後続にも脚を使わせたほうがいい。スローすぎると、待ち過ぎはアッという間に交わされる。

 今回、勝浦に手が戻り、スローに持ち込んだ後のそのポイントを、どう工夫して乗るかに注目したが、4コーナーで後続を離しにいくという頭脳プレーで、みごと課題を克服した。私は一人前になるまではG1ではベテランを乗せろという考え方をとるが、勝浦のヤマニンアクロの場合、今日の知的なプレーは、ダービーまで任せるに十分なプレーだった。

 ヤマニンスキーの二千b前後は、ことのほか強いから、今年の牡馬G1も逃げ馬には要注意だろう。

        ヘイローの影響


 この時期の短距離路線というとマイルの東京新聞杯だが、今年はキングヘイローの路線変更が巧くいくかどうかという点が注目ポイント。

 ダンシングブレーヴはノーザンダンサーでもリファール系だから、距離的に特徴のないナマクラなタイプだ。凱旋門賞の豪快な追い込みは目を瞠るものがあったが、その印象のせいでダンシングブレーヴ産駒のマイラーを見る目が最初の頃は難しかったが、キョウエイマーチで分かったように、母系にナスルーラを強く入れるとまるでナスルーラになってしまう。

 キングヘイローは母の父がヘイローだ。ヘイローの子のサンデーサイレンスはその母系にハイペリオンなどのスタミナの凝縮を持っていて、それがためにサンデーサイレンスの産駒は千八〜二千四百の切れを発揮できる。

 しかし、ヘイロー自体はスピード型だから、たとえばサンデーサイレンス産駒でノーザンテーストのようなアメリカンなタイプを配合すると、アルマームードのクロスになったりしてスピードが強調されマイラーになる。

 ヘイローのマイラーな特性が表現されれば、キングヘイローは中長距離馬ではなく千八か二千がベストだとイメージできる。母の父ヘイローに、ナリタキングオーがいたが、やはり千八タイプだった。

 今日は快勝も快勝、時計も着差も申し分なかった。安田記念は二千のスタミナがあるようなタイプが有利だから、ジェニュインがきたように、若干似たような面の窺われるキングヘイローがきてもおかしくはない。

       血統とベスト距離


 中京記念で昨年のオークス馬エリモエクセルが久々の快勝劇を披露した。秋華賞は休み明けのぶっつけの作戦がどうかと思われたし、レースもスローだった。エリザベス女王杯はスローに加えて直線で行き場がなくなり脚を余した。オークスと忘れな草賞が快勝で、距離的には二千〜二千四百がベストだ。

 休み明け3走目の前走の阪神牝馬特別は千六と、この馬には忙しく、一叩き以上の意味は見出せない。今回は二千ということもあって、調子とペースが合えば勝ち負けになるレースだった。

 父のロドリゴデトリアーノは愛ダービーのエルグランセニョールの子。エルグランセニョールはマイラーも中距離馬も出せるが、ロドリゴデトリアーノの母が、ホットスパークのクリムゾンサタンにコートマーシャルと、スピードの凝縮を配合しているので、産駒は長いところは疑問だ。

 二千の若葉Sを快勝したグリーンプレゼンスも、追い込み脚質のせいか長いところを使って失敗したが、ロドリゴデトリアーノは二千近辺、長くても二千四百までだろう。

 昨秋から、スギノキューティーもそうだが、ベストでない距離を血統を読み違えて使うケースが多いが、成功する確率は低いといわざるをえない。
(R)
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書斎の競馬Vol.11
2000/01「欅の向こう」



4センチ差の勝負------------

 今年の有馬記念の一つの焦点はスローペースにあった。

 近年の中距離や長距離戦の逃げ馬不在ぶりは、逆にダービー馬サニーブライアンや菊花賞馬セイウンスカイといった時代の寵児を生むことになるが、まだまだ数としては少ない。逃げ馬不在は距離別レース体系が確立されてくることによる当然の帰結でもあるが、もう少し先行タイプの馬をつくってもいいのではないだろうか。

 天皇賞とJCを連勝したスペシャルウィークは直線の長い府中コースが得意で、しかもダービーのような平均ペースやハイペースには無類の強さを誇っている。中山に替わって、逃げ馬不在となると、宝塚記念でグラスワンダーに負けたことを思い出すだけに、1番人気をグラスワンダーに譲ったのもやむをえまい。

 天皇賞、JCをメイチに戦った疲労というのも有馬記念では定説だ。  とすると、結果ハナ差の2着は褒められてよい。

 昨年の覇者グラスワンダーはJCを筋肉疲労で休んで、追い切り4本で仕上がるかどうか。スペシャルウィークと違って右回りが得意なだけにハリ明けの取捨だけが問題だった。

 本誌座談会で指摘されていたようにJCは捨てたという見方もあるかもしれないが、真偽のほどは定かではない。ともかく、的場がいうようにコズミが見られ、状態は完調とは見えなかった。それでも勝ったのだから強い。

 レースはテンの千bが65秒2と、同じ日に行われた九百万特別のグッドラックHと比べても4秒も遅かった。

 スローという展開の問題以外に、2強がそういったマイナス点を抱えていたから、ゴール前は当然のようにややこしくなる。

 終わってみれば辛勝とも順当ともどちらともいえない際どいレースになった。

 ゴール前でもいったん交わされたグラスワンダーは外からスペシャル、内からテイエムオペラオーがきて併せ馬のようになって再び伸びた。こういうのを「連れて来る」というが、根性があるからでもあるし、幸運でもあるし、とにもかくにも完調でないことを考えればよく走っている。

勝負どころは3コーナー----------

 2強以外の戦いぶりはどうか。

 ナリタトップロードはスローで引っかかったが、菊でも多少は掛かっていたように、ベストは二千二百くらいではないだろうか。菊というのは、それくらいの中距離馬のほうが好走しやすい。今日はレースにならなかった。

 ツルマルツヨシの天皇賞は生来の体質の弱さに加えて、中2週で輸送ということもあって疲労を招いたが、体質を考慮して今回は早めに美浦に入厩するという作戦が当たって体調は格段によかった。折り合いもついたが、位置取りが9番手というのは後ろすぎたか。スローで好位がとれる競馬をしてきただけに、せめてテイエムオペラオーのいた6番手はほしかった。

 3コーナーで外から的場に早めのマクリで交わされて、驚いて急に仕掛け、そのグラスワンダーを再び交わして先頭に躍り出るという持ち前の瞬発力の良さを発揮したが、的場に出し抜かれたのは油断だろう。

 昔、スピードシンボリで有馬を2連覇した野平祐二がいみじくも言っていたように、有馬は3コーナーで仕掛けて勝負にならないようでは、そもそもダメなのだという言葉を思い出す。グリーングラスも悲願の有馬制覇は早めのマクリだった。

 おかげで、外に的場がいるだけに、外に持ち出せず、直線で抜け出しても、内によれる馬だけに、徐々に内にもたれていって、この日は中山最終日でインが荒れていただけに、ゴール寸前で伸びを欠くことになったのは惜しかった。このレースは勝つチャンスがあったと思う。

 3コーナーから早めに外に出して、グラスワンダーが走ったコースを通っていれば伸びが違ったろうし、内に馬が2頭ほど入って彼我のコースが逆になるし、後ろからくる馬が通るコースが狭くなるだけ作戦勝ちになるのだが、有馬の4コーナーで5冠馬となるシンザンの進路を制限して、どうするんだ、と選択を迫ったミハルカスの加賀武見のような思考の集中はまだむりか。

 グラスワンダーの的場はさすがに中山は知り尽くしていて、完璧なタイミングでのスパートだった。グッドラックHは1着の的場が内で2着の藤田が外だったが、メインレースで逆にするとは一日の学習成果も出た。有馬では内を通りたくないと語って、そのとおり4コーナーでも外にいたが、そこでさらに外方向にはっきりと手綱で指示して、成功する者に共通することだが、徹底して考えを貫いた。

 スペシャルウィークの武は、スローで馬なりで行かせると宝塚記念の二の舞になるから、この日の後方待機、グラスワンダー・マークは正解だろう。この男も決めたことは貫く。コースの外が伸びる日なので、その点も目一杯に利用した。連戦の疲労や中山における得手不得手を考慮すると走っている。

 テイエムオペラオーは切れる脚がイマイチで、ステイヤーズSのように不覚をとるが、この日も一旦交わされてまた伸びたように、この年の4歳4強ではいちばんスタミナがある。

 今年もリーディング・トレーナーをとることになる藤沢和厩舎のシンボリインディはマイラーのAPインディ産駒だけに、(だからこそ、NHKマイルを勝ったのだ)、使っても勝負になるとは思えなかった。

年度代表馬------------

 有馬がこういう結果になって、99年の年度代表馬が難しくなった。凱旋門賞をはじめとして外国で何戦も戦って好成績を残したエルコンドルパサーは遠征成績が抜群で、国内のレースがなくても年度代表馬に値する。

 グラスワンダーは春秋のグランプリを、しかもスペシャルウィーク相手に連覇した。

 スペシャルウィークは春秋の天皇賞を連覇してJCを勝ち、春秋のグランプリが2着と、賞金額からいってもローテーションからいってもすばらしいの一語。

 どの馬にあげても理屈は成り立つと私は思う。

 個人的には、エルコンドルパサーはJCをスローペース以外でやったらどうなったか、有馬でグラスワンダーとやったらどうなったか、2つの疑問を積み残している。

 グラスワンダーはJCの左回りの問題を回避している。

 スペシャルウィークは一年中走り続けてグラスワンダーには負けたが、宝塚と違って有馬では作戦変更して、スローでの小回りコースでの後方一気という捨て身の戦法でハナ差は誉められてよい。

 ほんとうに、どの馬でもいいのだが、ファイティング・スピリットを重視する私としては、スペシャルウィークにやってもいいと思うが、ま、どれでもいいか。

ワイド馬券向きのレース-------

 中央場所でワイド馬券が発売されるのは、この12月、阪神三歳牝馬Sの週が最初で、G1はこのレースからだった。前日の土曜日が2割ほど売り上げも増えて、まずまず順調な滑り出しだった。

 今年の三歳牝馬戦線は大物感のある馬は少なかった。

 レースはヤマカツスズランが逃げると競る馬もいず、そのまま逃げ切ってしまった。ジェイドロバリー産駒は底力がないので、平坦、短距離、単調なレースが得意なだけに、このまま春のG1まで快走を続けられるかは疑問だ。

 2着のゲイリーファンキーはシアトリカルの子だけに前走の千四はレースをしていないし、この千六でも長いということはない。先が楽しみな馬だ。

 3着のマヤノメイビーはミスワキ×ニジンスキーと重厚な血脈構成をしている。今まで下手だったスタートはマズマズだったが、内枠からのスタートを再後方まで下げて大外を追い込んで2着争いまで。いちばん強い馬はこれだろう。

 こういう、もったいない乗り方は、ワイド馬券が救済措置のような役目を果たすことになる。

 2000年からは外国馬がG1に出てくるケースも増える。JCのインディジェナスのような予測しにくい馬(次走の香港の負け方を見ればよくわかる)が2着に滑り込むと馬券は当てにくい。外国馬だけでなく地方馬も出てくるし、騎手がミスして3着といったケースなど、今後のJRAはファジーな結果が増える時代になるから、ワイド馬券登場はグッド・タイミングだった。

福永G1制覇------------

 朝日杯は1週前になって好成績を挙げている新種牡馬カーネギー産駒の代表馬カーネギーダイアンが一頓挫、レースを回避して、マイル不向きだが器の大きそうなヤマニンリスペクトも出てこず、小粒なメンバーになった。

 そうなるとレジェンドハンターに注目が集まる。前走はペースが楽だったが、この日はスプリンター勢が何頭か出てきて、テンを33秒5で飛ばしたからペースが速くなった。それを早めに追いかけて、しかも4コーナー手前で前を捕まえにいくというアンカツらしくないミス・ジャッジで楽勝に見えたレースもゴール前で止まってしまった。

 血統的には3代母がスワンズウッドグローヴという名牝系に属している点に見どころがある。父サクラダイオーはマルゼンスキー産駒。サクラダイオーの兄がサクラサニーオーで、その祖母がスワップスの全妹に当たる。

 スワップスの血が入ると、金は稼ぐが底力が足りずG1では割り引きというのが私の考えで、シリウスシンボリ、サクラユタカオーやミホシンザンの年は、スダホークなどスワップスの血を持つ馬が多かったが、私は軽視して成功した。

 スワップスにはハイペリオンとサンインロウが入り、この2つの血はニックでなかなかの馬を出すし、金を稼ぐ馬を出すとはいえる。ハイセイコーもそういう血の組成だったが、レジェンドハンターはハイセイコーと風貌が似ていて、スワップスの持つハイペリオンとサンインロウの血が強く表現されていると私はにらんでいる。

 金を稼ぐ馬になるだろう。G1はいくつ勝てるか、アンチ・ハイセイコーでもあった私としては少ないと見たい。

 ラガーレグルスは父のサクラチトセオーが個人的には好きだ。産駒は走っている。朝日杯のラガーレグルスも期待したが落鉄した。直線坂下で絶好の位置にいたが、靴が脱げてはレースにならない。

 エイシンプレストンは四肢がどっしり踏ん張っている相撲取りのような馬で、パドックを見ると惚れ惚れする。有力馬が回避して急遽参戦したが、新馬を勝ったばかりでも、その圧勝ぶりは目立っていて、G1でも侮れなかった。

 インから鋭く抜けたが、単にコース取りがはまったのではなくて強い馬だと思う。

 福永はこれでG1のプレッシャーから解放されるだろうし、今後一層の精進を期待したい。

ナスルーラとハイペリオン------

 ラジオたんぱ杯三歳Sは朝日杯で楽鉄したラガーレグルスが出てきたが人気が割れたのは意外だった。

 レースではテンが62秒9のスローなのにラガーレグルスが後方一気で差し切った。

 父サクラチトセオーはトニービン産駒。トニービンはナスルーラとハイペリオンを強く持つのが特徴だ。スタミナと底力のハイペリオンに、スピードで20世紀の競馬を変えたナスルーラの組み合わせがよい。

 ラガーレグルスは祖母の父にテスコボーイを持つ。トニービンにテスコボーイはウイニングチケットと同じだ。テスコボーイはナスルーラとハイペリオン以外に強い血を何も持たないシンプルさが特長だ。

 この配合でラガーレグルスはナスルーラとハイペリオンという、ここ30年くらいの日本の競馬シーンでいちばん成功した血の組み合わせを、しかもダブルに強調して持つことになっている。

 ラガーレグルスの祖母の弟が、シプリアニ産駒で後方一気の切れを誇ったエクセルラナーで、古いファンはしびれるだろう。その母の父が底力のプリメロだった。

 多頭数の内枠を引いてインで我慢しながら抜けてきたが、4コーナーでは馬群がゴチャついて何度もぶつかっていただけに、馬込みを苦にしない根性があるし、他馬とはモノが違う。00年も楽しみな馬だ。

日本とウダイプール--------

 父内国産馬の重賞はカブトヤマ記念と愛知杯だが、歴代の勝ち馬にはヒンドスタンやアローエクスプレスの血を引く馬が多く、これが特徴だった。ともに、名牝 Udaipur ウダイプール(アガ・カーンのつくった名牝で英オークス馬)の血を濃く引いている点が興味深い。

 99年のカブトヤマ記念の優勝馬テイエムトッキューの父タマモクロスは、3代母の父がヒンドスタンだった。

 99年の愛知杯を勝ったのはバンブーマリアッチ。この父バンブーアトラスは自身の牝系が5代先でウダイプールに遡る。

 ダービー馬バンブーアトラスの祖母がシザラだが、バンブーマリアッチは自身の祖母の父がファストバンブー。ファストバンブーは母にシザラを持ち良血を残すために種牡馬となった。バンブーマリアッチは、よってシザラの3×4のインブリードを持つことになる。

 こうしてバンブー牧場の血の集大成として生まれたバンブーマリアッチは、G1は勝てなかったが、父内国産馬の重賞である愛知杯を勝つことになった。惜しみない拍手をおくりたい。

 ちなみに父内国産馬の重賞レースの勝ち馬で、Udaipur に因縁のある馬は以下の通り。 (注:シンザンはヒンドスタンの子)

●カブトヤマ記念● 61年トウコン(父ヒンドスタン)、62年ケンホウ(父ヒンドスタン)、69年メイジアスター(父ヒンドスタン)、72年ハクホオショウ(父ヒンドスタン)、73年ブルスイショー(父シンザン)、77年アローバンガード(父アローエクスプレス)、78年アサヒダイオー(父シンザン)、79年メジロマーティン(祖母の父ヒンドスタン)、80年フジマドンナ(父シンザン)、81年キンセイパワー(父アローエクスプレス)、82年ジュウジアロー(父アローエクスプレス)、85年チェリーテスコ(父ナオキの母の父ヒンドスタン)、86年キッポウシ(父アローエクスプレス)、96年スガノオージ(母にウダイプールの母ウガンダ)、98年ツルマルガイセン(母の父アローエクスプレス)。

●愛知杯● 64年コウタロー(父ヒンドスタン)、70年オウジャ(父ヒンドスタン)、71年スリービート(母の父ヒンドスタン)、72年シンザンミサキ(父シンザン)、73年、74年連覇シルバーランド(父シンザン)、78年ハシコトブキ(父シンザン)、79年グレートタイタン(父シンザン)、81年ヒヨシシカイナミ(父シンザン)、82年ワイエムアロー(父アローエクスプレス)、83年アローボヘミアン(父アローエクスプレス)、89年グレートモンテ(父モンテプリンスの母の父ヒンドスタン)、93年ホマレオーカン(祖母の父アローエクスプレス)、95年サウンドバリヤー(母の父ナオキの母の父ヒンドスタン)。

 ざっと、これだけの馬がウダイプールを持っているのだ。(ちなみに、残りの馬の多くはプリメロの母 Athasi アサシを持っている)。

 今、サンデーサイレンスなどA級種牡馬が導入されて、サンデーサイレンス産駒で母系にプリメロを持つスペシャルウィークが大活躍し、メジロライアン産駒で母系にプリメロを持つメジロドーベルが外国産馬相手に大活躍するのは、その血が本来持っている名血の度合や底力から考えてあたりまえの話にすぎない。

 日本には昔からそこそこ一流の血が入ってきているのだ。

 今、シンザンやアローエクスプレスを、花形の種牡馬の産駒の、母系の中に見出せないとしたら、日本の育種文化を哀しむしかない。

スプリント------------------

 暮れに行われるスプリンターズSは格上の馬がほぼ順当に好走するレースだ。春の高松宮記念は雨の季節に小回りの中京で行われるから、ダッシュ力や器用さが要求され格が通用しない。スプリンターズSの行われる中山千二百bはコーナーが少なく、ゴール前に坂もあって底力が問われる。ステイヤーが出てくるわけではないから、距離適性よりも格といった傾向が強い。もっとも、距離は千二がベターであるにこしたことはない。

 アグネスワールドはG1のうちスプリンターズSだけは勝てたヒシアケボノの下に当たる。ヒシアケボノが勝ったときの2着だった宿敵ビコーペガサスは父がダンチヒだった。アグネスワールドはダンチヒを父に持った。スピードのヒシアケボノと、鋭さのビコーペガサスとの、良いとこ取りした配合といえる。

 これでスプリンターズSを勝てれば血統は競馬の基本であるといえるが、フランスのG1を勝っても、あれは千bだからとか言われたが、本格化したのは、つい半年前で、強さを日本ではまだまだ見せつけてはいない。

 スピードが抜群にあるといってもゴール前でバタバタになるようなスピード一辺倒でもない。

 この日は外から昨年の覇者マイネルラヴが早めに被さってきて走りづらく、惨敗もしかたない展開だったがゴール前までよく踏ん張った。

 マイネルラヴは前年は掛からないようにゆっくり上がっていったが、今回は3コーナーから行かせてしまったのが、どうだったか。スタートが抜群だったのも裏目に出たのだろう。

 勝ったブラックホークは名マイラー・ヌレイエフを父に持ち、良いスピードを表現しているが、少し切れ味に乏しくゴール前でたれる。馬体も前が勝っていて、スピードだけで押しまくる方法もなくはないと、オータムHとマイルCSを見て思った。

 この日は陣営の描いたとおりのイメージで、千二参戦を進言したという鞍上・横山典にしてみれば、してやったりだった。

 キングヘイローは母の父にヘイローを持つマイラーで、千六〜千八あたりがベストと思うが、格はスプリント戦線だけ走っている馬よりも断然上なだけに、マイラーのスピードで押しまくっても通用する。この日はスタートで出負けしたのが大きかった。

 00年からスプリント戦線の番組も改革され、ますます夏と冬はステイヤーとスプリンターの季節と化す。それ自体は賛成だ。

 スプリンターズSは9月となるが、これは夏の新潟で直線だけの千b競馬が行われることも含みとしてあるだろう。

 あえていっておくなら、私は千bの競馬にはほとんど価値を見出せないと思っている。

 サラブレッドの歴史はスピードの注入の歴史でもある。私の考えるところ、〈スピード劣化の法則〉によりスピードは劣化するから、新たなスピードを注入し続けなければならない。

 しかし、だ。

 世界のサラブレッドの長い歴史で、マイル〜二千に強い多くのマイラーが次の時代の覇権を握ってきたが、スプリンターが次の時代をつくったことがあっただろうか。

 日本でも70年以降のスピード化していった近代競馬のなか、成功した種牡馬はアローエクスプレス、テスコボーイ、トウショウボーイ、パーソロン、ノーザンテーストなどのマイル〜二千のタイプだった。

 けっしてミスターシービーやタニノムーティエやグリーングラスといったステイヤーでもなかったし、スプリンターのサクラシンゲキやサクラバクシンオーでもなかった。

 スプリンターズSは33回を数えるが、勝った牝馬が繁殖牝馬となっても繁殖でも成功しない。底力のオークス馬が成功するのに、スピードの桜花賞馬が繁殖で成功しないのと同じだ。タマミやキョウエイグリーンやメイワキミコがどうなったか考えるべきだ。

 スプリンターもステイヤーも見る楽しさはあるのだが、生産者がとりこになるようなものではない。フランスのような二千前後の中距離偏重競馬も捨てがたいものがあるし、アメリカがスピード競馬だといってもダートを一気に行って二千が持たないようでは一流と呼ばれることはない。

 サラブレッドの特長である、しなやかで、柔らかなスピードというものと、電撃の6ハロンの速さとを感じ分けられる感性を大事にしたいし、その感性と認識でもって、生産やレースの全体的な競馬の体系、システムを組み立てるべきだ。

 そのとき、日本の競馬はもう一段強くなるだろう。
(R)
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2004ダービー回顧
コスモバルクの暴走


欅欅欅====================================================
 ■■■ ケヤキの向こう ■■■  笠 雄二郎・Yujiro Ryu
Vol. 211 =================================================

● 暴走、混乱、壊滅

 32度の真夏日。洋芝がこのところの暑さと蹄鉄で衰退し土煙が上がり、外伸びの堅すぎる馬場。条件戦の1800で1分45秒台のレコード。異様な天候と異様な流れと異様な時計のダービーだった。

 ゲート前の五十嵐は落ち着きがないように見えた。なぜだか福永の後ろに入れることもしなかった。3コーナーからは相手もダイワメジャーという乗り方だった。この距離でこのペースなら相手はSS×ノーザンではなく外から来る差し追込馬なのに。でも、五十嵐を責めるのは岡田さん、かわいそうだよ。柴田政人も中島啓之も河内洋も完璧以上の競馬をして、やっと際どく勝った。ダービーは全てのファクターがみごとにかみ合わないと勝てない。

 「週刊競馬通信」の重賞回顧を書いていた頃から何度も言っているが、府中は世界に誇る味わい深いコースだ。とくに2400以上は奥が深い。坂が2つもある。直線は例がないほど長く、坂を上がってからが、これまた長い。馬場の幅員は広く、どこを通るかその日ごとに判断が難しい。大歓声のスタンド前の発走でふてぶてしく人馬を落ち着かせないといけない。

 最近のダービーは18頭になった。28頭と比べて穏やかだ。コーナーを削って回りやすくした。3コーナー手前の坂も少し削った。比較ということでいえば信じられないくらい易しいレースになった。小島太はせめて20頭にしろと言っている。賛成だ。あのダービーのケヤキの向こうの異様な興奮があまりなくなった。それでも難しい。柴田政人、中島啓之、島田功という、このコースの2400の達人の残した言葉が忘れられない。1コーナーはゆっくり入れ、2コーナーまで外に振られるな、3コーナー手前の坂は意外と消耗するから慎重に通過しないといけない。

 名手でも若い頃は府中に慣れるのに時間がかかる。府中だけは特別なのだと私は信じている。慣れてはいないが腕は達者な道営の騎手で勝とうという岡田さんの美学はほんとうに美しい。美しすぎる故に、私はダービーに関しては騎手を責める気はしない。デザーモやイシザキではいかんのかどうか、私は知らない。

 マイネルマクロスも皐月賞前から思っていたが後藤でなく地方競馬に縁のあるジョッキーを乗せたかった。死にものぐるいで何でも遅めのペースに押さえ込んでしまうオカベというのも名案かも。私はバルクは血統や馬体から2000がベストと言ってきた。この馬場なら60秒の遅めの平均ペースで前々でケイバして直線でヨーイドンだと思って◎を打った。あのハイペースではスタミナ負けする。コース慣れしていない騎手を先導するには真心のこもったラップを踏める地方のジョッキーを乗せてほしかった。

 社台まで応援していたというコスモバルクは暴走ペースを追いかけて沈んだ。馬券と声援はあつい午後の空に散った。無惨なダービーは終わったが、G1のチャンスは十分ある。秋の天皇賞とマイルCSが合っていると思うが、出てくるか、出られるか。菊という話があるが、私はマイルと2000を走らせてやりたい。

 愛知杯の◎はタケハナオペラあたりとやっていた54キロのヘヴンリーロマンス。左回りも得意だ。

 ユニコーンはカフェオリンポスと思っていたが、ソエで休んでいて追い切りがピンとこない。◎はダイワバンディット。この馬は右回りの成績は無視したい。前走は強かったし、カポウティ系は芝も巧いがダートに対応できそうな気がする。

 安田記念はローエングリンが後藤からノリに乗り替わる。昨年は後藤が乗って、後藤と犬猿の仲の吉田豊がミデオンビットでそのハナを叩いて平均ペース。今年はローエングリンがノリでミデオンビットはオカベだから、秋の天皇賞のローエングリン後藤とゴーステディ吉田のようなハイペースの意地の張り合いもないだろう。

 インの芝がはげたCコースから今週はAコースに替わる。インの3頭分は芝が残っているはずだ。昨年と同じでイン伸びだろう。G1の週にこういう外から内へのコース替わりはよくないと何度も何度も新聞や雑誌に書いてきた。私にも意地がある。インを通ると決めつけられそうな馬に◎を打つ。ほんとうは逃げ馬の後ろでじっとしている馬を狙いたいが、どれがインを走れるかはスタートしてみないと分からない。だからよけいにイヤになる。スポーツとして走る前から楽しくないから改善を模索してほしい。
(R)
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